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世田谷区の桃太郎 桃野芳文Webサイトです
2020-05-01

区長は記者会見で「その線」を動かした。新型コロナ罹患者に関する個人情報は、どこまでが公開の対象か。

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世田谷区区議会議員、桃野芳文です。
新型コロナウィルス感染症対策。
多くの方が不安になっている時こそ、行政機関や政治リーダーの情報発信は大切です。
新型コロナ禍以前から、世田谷区長である保坂展人氏の個人ツイッター(区の公式見解によると、あれは区長のツイッターではなく、保坂展人さんの個人ツイッターということらしい)の情報発信には間違った情報や、区民に勘違いを誘う情報が多いと指摘してきました。
新型コロナ対策についても、やってもいないことをやっていると誇る発信の例も。こちらは関連ブログ。
世田谷区長のコロナ対応。リーダーが正しく現状を把握出来てないのに、正しい施策を投入できるはずなど無い
保坂区長が4月21日に発信している「世田谷区でも2週間前から、保健所を介さぬPCR検査を始めています」は明らかに事実と異なります。世田谷区では保健所を介さないPCR検査は行っていません。
ちなみに、このツイートの後、医師会の協力が進み準備が始まりましたが、本日(5/1)時点でも「保健所を介さないPCR検査」は協議中であり、動き出してはいません。
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世田谷区長は自身の経歴を「教育ジャーナリスト」と名乗っているのですが、ジャーナリストというには、その情報発信に対する姿勢があまりにお粗末。
以前、桃野に「私はこれまでメディアの方たちと仕事をしてきたのですが、ジャーナリストと名乗るのなら、全国紙の記者出身なのかと思っていました。違うのですね」との意見が寄せられたことがあります。
確かに一般的な感覚だと「ジャーナリスト」と名乗るのだから、新聞社やテレビ局に勤めていたのかなとか、何かジャーナリストに贈られる大きな賞を取ったことがあるのかなと想像してしまいますよね。
でも、世田谷区長はこれまで、全国紙、地方紙も含めて新聞社に在籍したこともないし、テレビ局の報道局で記者をしていたというような経歴もありません。(wikipediaによると「1976年から1996年まで、若者が自由に出入りできるフリースペース「青生舎」を運営し、ミニコミ誌「学校解放新聞」を発刊」とはあります)
しかし、自称とはいえジャーナリストを名乗るのなら、せめて正確な情報発信、適切な情報発信に努めてもらわなければ。
ということで、ここからが本題。
世田谷区内で単身赴任中の50代男性会社員が新型コロナに感染し、命を落とされました。この男性は発熱後、感染を疑い、保健所に相談しようとしたものの電話がつながらず、PCR検査を受けられたのは発熱から6日後。その検査結果が出る前にその尊い命が失われてしまったのです。
■時系列に並べると
・4月11日、男性が死去。
・4月13日、死因は新型コロナによる肺炎と、警察から家族に連絡。
・4月22日、一連の事実について、毎日新聞(紙面の報道は無し、web版ニュースのみ)が報道。
新型コロナで孤独死した友人に捧ぐ(上)(毎日新聞、医療プレミア特集)】(毎日新聞)
・4月26日、東京新聞(紙面、web版)が報道。
<新型コロナ>単身赴任男性、無念の孤独死 発熱6日後検査、死後コロナ判明】(東京新聞)
・4月27日、世田谷区長の定例記者会見にて区長が、記者からの事前質問に答える形で事実を認め、以下のように「お詫び」発言。
「電話をいただきながら、繋がらなかったということについてお詫びをいたします。相談センターの電話と保健師、医師、看護師等の受け手を拡大し、13日から3回線を6回線にいたしました。改善に努めてきたものの早期検査につなげられなかったことに責任を感じています」【区長記者会見(令和2年4月27日)】(世田谷区のサイト)
・4月28日、区長記者会見を引用する形で、毎日新聞、東京新聞以外の新聞社も報道。
■以上の時系列になります。
先ずは亡くなられた男性、そしてご遺族の皆様に心よりお悔やみを申し上げます。そして、桃野がこれまで委員会等で区に求めてきた「電話相談機能の拡充含め保健所機能の増強」が必要だということを改めてここでも申し上げておきます。
そして、本日のブログは情報共有、情報公開についてです。本件最初の報道は4月22日ですが、世田谷保健所は遅くとも4月13日の時点でこの男性の死と死因について把握していたはずです。
一方で、この出来事について世田谷区(世田谷保健所含む)は、4月27日まで公にしていませんでした。議会の福祉保険常任委員会への報告も、報道機関への公表も無し。
4月22日と4月26日には新聞報道されていますが、本件のような場合、新聞記者が記事を書く際、区への取材も行っていると考えるのが普通です。しかし上記の毎日新聞、東京新聞記事には「区のコメント」は出てきません。
そこで桃野は、世田谷区の方針は「新型コロナの罹患者に関することは個人情報。公にしない」であり、取材に対して「個人情報なので、一切お答えできない」と対応したのだろうと想像しました。
そこで、取材の窓口になる広報広聴課に聞いたところ以下の話。
・報道前に毎日新聞からは取材があった。
・しかし広報広聴課では、その時点で、この男性の死去についての事実を把握していなかった。
・よって「そのような事実は把握していない」と答えた。
桃野が併せて「もし事実を把握していたら、取材には答えていたのか」と聞くと「その場合でも個人情報なので、お答えできないと答えた」とのことでした。そうであれば本来は事実の把握の有無と関係なく「そうした話は個人情報なので、事実の有無も含めてお答えできない」と答えなければならないはずですが、それはここでは置いておきます。
先ず最初の問題は、コロナ禍の非常事態における役所内での情報共有について。事実が正しく役所内で共有されていなければ、報道機関への対応もできるはずがありません。ここはすぐに仕組みを作るべき。その必要性については後ほど詳述。
そして今回、どこまでを情報公開し、どこまでを個人情報などに配慮し非公開とするか。この点に関する問題も明らかになりました。
公開の基準として「どこで線を引くか」、どの情報までが公開の対象か。これについては、報じる側と報じられる側でせめぎ合いが生じるだろうことは容易に想像がつきますが、区は自ら線を引き、ブレずに運用するのがその仕事。
しかし今回、区長は記者会見で、その線を動かしました。
従来、区が引いた線に沿って記者会見をするなら、報道機関からの事実確認に対して「それは個人情報なので答えられません」と答えなければいけません。既に新聞報道が先行していようがいまいが区としての線は変わるはずはなく「もう報道されてるんだから、言ってもいいよね」とはならないのです。これは行政組織の一員なら誰でもわかってる話。区長はわかってなかったのかもしれないけど。
しかし、今回区長は記者会見で答えることで、本件のような個人情報は「公開の対象」としました。今後は、新型コロナ感染症による区内の死者について、日付、年代、性別などを含んだ情報を公開するということ。
今後、記者の取材に対して「答えられません」と言えば「4月27日の区長記者会見と整合性が取れてない」となってしまいます。同時にそれは、そうした情報について区議会の「福祉保健常任委員会」などにも報告し、区民に公表しなければならないということ。今後、保健所が得ている情報を役所内各部署と情報共有する仕組みが必要になるでしょう。
区長が「線を動かした」以上、それは世田谷区の「新型コロナ罹患者に関する情報」の扱いが変わったことを意味します。自称ジャーナリストの世田谷区長。記者会見における自身の行動の意味が理解できていると良いのだけど。

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