山の上で孤立するお年寄り、存在意義を問われるタクシー会社、さびれる地元商店街、これをつないだものとは。

2015.07.31

地方創生。
第2次安倍内閣が掲げるキーワードの一つです。
おおざっぱに言えば地方の経済活性化、地域振興ということになるでしょうか。

では、逆に”地方都市の衰退”とはどのような原因で起こるのか。
その典型例の一つが、その地方での産業の栄枯盛衰です。
そんな街の一つになるでしょう。
先日、北九州市の枝光地区を訪問してきました。

枝光地区は、かつて官営八幡製鉄所(現・新日鉄住金)の企業城下町として栄えた街。
戦前戦後、多くの労働者がこの街に流入し、人々はその周辺の丘陵地に居を構え大変な賑わいを誇ったそうです。
ところが、20年前に新日鉄本事務所がこの街から撤退すると、街全体が一気に衰退。
かつて新日鉄に務める人々が多く住んだ丘陵地帯も、住む人は退職後の高齢者ばかりとなってしまいました。
隆盛を誇った商店街もさびれる一方。
坂の上の住宅地は高齢化が進む一方で、坂が多く道が入り組んでいるため、公共交通機関が発達せず高齢者の交通手段の確保が課題でした。
人口が減る街。
高齢化が進み、かつ交通の足が無い。
商店街への買い物客も減るばかり。
ところが今、その枝光地区で新たな地域活性化策が注目されています。

枝光地区で、さびれる商店街と買い物難民の両方を救ったのは“乗り合いタクシー”。
この乗り合いタクシーを運行しているのが地元の光タクシーです。
実は光タクシーにも苦しい事情がありました。
新日鉄構内に入構できる唯一のタクシー会社として繁盛していた光タクシーも、新日鉄本事務所移転などの影響で売上は減少。かつてのお客さんの多くは退職し、社用の時代と違い頻繁にタクシーを使うというような経済的余裕はありません。新日鉄や、その周辺企業の移転で存在意義も問われるほどの逆風のタクシー会社。

地域おこしには不利な条件ばかりだとも思われる状況で「丘陵地の高齢者」と「衰退する商店街」を結ぶ乗合タクシーは産まれました。
北九州市からの補助金は5年に一度の車両更新時に上限300万円/台。
あとは運賃(¥150/人、どこで乗り降りしても定額)による収入で運行されています。
営業開始当初は「タクシーなら初乗り590円の料金、なぜ安価な乗り合いバスを走らせるのか!」と社内での反対意見もあり、他のタクシー会社の抵抗も激しかったそうです。
しかし平成12年の事業開始以来、逆に商店街からのタクシー需要は増え、乗り合いバスの運転手の運送収入はタクシーに乗る運送収入よりも上になったとのこと。加えて、高齢者を含む地元の便利な交通機関として重宝されていることは言うまでもありません。

さらに、光タクシーはかつて銀行に貸していた建物をリノベーションし、演劇やイベントなどに活用できる「枝光アイアンシアター」も整備して地域に新たな活力を創出しています。
この劇場を拠点にする劇団員10名規模の劇団は、地域にとけ込んで創作活動をする一方、自発的に商店街のごみ拾いや地元のお祭りにも参加し、地域の活性化に一役かっているそう。

ピンチをチャンスに。
外からの力や行政からの補助金頼みではなく、街の中から「変わらなければ」という意識が生まれ、アイデアと新たな挑戦で賑わいを創出していく。まさに地方創生と言えるのではないでしょうか。

■写真は枝光地区を走る乗り合いタクシー(光タクシーのホームページより)
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